潤滑油添加剤 用語解説
パッケージ添加剤
DIはDetergent Inhibitorの略で、パッケージの中には必ずDetergent(金属系清浄剤と無灰分散剤)とInhibitor(例えばOxidation Inhibitor、Corrosion Inhibitor)が配合されていることからなる。
自動車用のエンジン油や自動変速機油(ATF・CVTF)、ギヤー油では基油に多くの種類のコンポーネントが配合される。潤滑油製造工場における多数のコンポーネントの受け入れ、在庫、基油への配合(添加剤の秤量作業を伴う)などの管理、作業は非効率的なので、添加剤メーカーであらかじめそれらのコンポーネントを混合して1つの製品(DIパッケージ添加剤、DIパッケージ、パッケージ、あるいは単にDIと呼ばれる)として潤滑油工場に納入されるのが一般的である。
エンジン油や自動変速機油のDIにはVIIおよびPPDは配合されず、それらは潤滑油工場で目標のSAE粘度グレード、流動点に合わせて必要量が添加されることが多い。
ルーブリゾールパッケージ添加剤製品一覧
清浄分散剤
清浄分散剤は自動車、建設機械、農業機械、船舶などのエンジン油に広く使用されており、基油に対する配合量が多く、米国や日本では添加剤需要量における比率が50%前後と思われる。
清浄分散剤は多機能型添加剤で、(1)スラッジ分散作用、(2)不安定なスラッジ前駆体(中間生成物)を界面活性作用により可溶化し、スラッジ化を防ぐ可溶化作用、(3)燃料の燃焼生成物、潤滑油の劣化生成物に含まれる酸性物質の中和作用を発揮する。さらに、スルホネートは防錆作用を、またフェネートは酸化防止作用を持っている。
清浄分散剤には金属清浄剤と無灰型分散剤があり、表記する際には合わせて清浄分散剤と呼ぶことが多い。
清浄剤と分散剤の主用途はエンジン油である。
清浄剤はディーゼルエンジン油では高温のために発生したカーボンデポジットがエンジン内に付着するのを防止し、清浄に保つなどの機能がある。
欧米や日本などの先進国では環境保全の観点から軽油中の硫黄含有量が段階的に限りなくゼロに近づいている。
軽油中の硫黄が少なくなればディーゼルエンジン油中の清浄剤の配合量を減らして低灰エンジン油を製造することができるが、分散剤の量を増やして清浄性の低下を補うことが必要となり、最近のディーゼルエンジン油規格では、すすの分散性が規定されていることから分散剤を多用する低灰油へと向かっている。
またエンジン油に限らず工業用潤滑油でも使われるケースが増えている。
ルーブリゾール清浄分散剤製品一覧
酸化防止剤
潤滑油は使用中、あるいは使用前でも保管条件によっては空気中の酸素によって酸化し、アルコール、ケトン類となり、最終的には油に不溶の重縮合物(スラッジ)を生じて、潤滑油の品質を低下させたり、金属疲労や摩耗による機械トラブルを引き起こしたりする。この酸化を抑えるのが酸化防止剤である。
現在実用化されている潤滑油用の酸化防止剤は、(1)連鎖反応停止剤:フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、(2)過酸化物分解型:ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、有機硫黄系酸化防止剤、(3)金属不活性化剤に分類される。
エンジン油では主として酸化防止剤としてZnDTPが使われてきた。摩耗防止剤、腐食防止剤としても機能する極めて有用な添加剤である。しかし、構成元素の1つであるリンが排ガス後処理装置の触媒を劣化させる(触媒毒になる)マイナス面を持つ。
また、ガソリンエンジン油規格のILSAC GF-4では、リン濃度を0.08mass%以下にするように規定が強化される一方で摩耗防止性のためにリン濃度を0.06mass%以上と規定しており、厳しい目標をクリアするためにZnDTP配合量を半減し、酸化防止性の低下を補うための他の添加剤との組み合わせなどが行われている。
ルーブリゾール酸化防止剤製品一覧
粘度指数向上剤
粘度指数向上剤(Viscosity Index Improver:VII,Viscosity Modifier)は、温度の変化が潤滑油の粘度に与える影響を少なくする油溶性の高分子物質(ポリマー)で、その分子量は数千~数十万である。
ポリメタクリレート系化合物(PMA)やオレフィンコポリマー系化合物(OCP)、あるいはこれらの混合物が代表的である。
ルーブリゾール粘度指数向上剤製品一覧
流動点降下剤
潤滑油の流動点を下げて、その適用温度範囲を広げるのが流動点降下剤(Pour Point Depressant:PPD)である。
ポリメタクリレート系VIIは流動点降下の機能も持っている。原油の種類、基油の精製方法によってPPDの効果が異なる。
ルーブリゾール流動点降下剤製品一覧
耐荷重添加剤
耐荷重添加剤は金属摩擦面を油膜で隔てることができず、金属面が接触する境界潤滑が発生する際に機能するもので、油性向上剤、摩耗防止剤、極圧剤などに分類される。
油性向上剤は油性剤、潤滑性向上剤とも呼ばれ、省燃費タイプの自動車用エンジン油や駆動系潤滑油に使用される摩擦調整剤(Friction Modifier:FM)やモリブデンジチオカーバメイト(MoDTC)などがある。
摩耗防止剤と極圧剤は、高荷重下あるいは低速度下の境界潤滑領域で油膜と金属表面の酸化保護被膜が破れた時に、金属表面と反応して別の被膜を形成し、摩擦面の直接の接触を妨げて金属面の融着を防止する。極圧剤は金属表面との反応が摩耗防止剤よりも早く、より大きい荷重に耐えることができる。
摩耗防止剤と極圧剤は、高荷重下あるいは低速度下の境界潤滑領域で油膜と金属表面の酸化保護被膜が破れた時に、金属表面と反応して別の被膜を形成し、摩擦面の直接の接触を妨げて金属面の融着を防止する。極圧剤は金属表面との反応が摩耗防止剤よりも早く、より大きい荷重に耐えることができる。
塩素化パラフィン、塩素化油脂は極圧性に優れることから金属加工油に多く使われてきたが、廃油を焼却するとダイオキシンを発生する可能性があることから、ZnDTPや硫化オレフィンなどへの代替が進んでいる。